平成14年度 (2002年度)

 所 感 ・・・ 会長 横山 健次
 グローバル化時代における技術者教育プログラム ・・・ 学長 櫻井 春輔
 平成14年度(2002年度)活動方針




横山健次氏 所  感
 ※広島工業大学同窓会報第36号より

会長 横山 健次

 激動の20世紀が終り、希望に満ちて迎えた新世紀最初の年は、我々の期待を裏切、暗い不安を感じた1年間でした。
 
 特に9月11日のニューヨークでの出来事は真実とは思えない程の驚きの映像として今も残っています。又この事に依り新たな形の戦争が勃発し世界の人々が不安を抱き世界経済全体が暗いものになって居ります。

 又国内では国民に高い支持を得て誕生した小泉内閣のスローガン「改革なくして成長なし」も言葉だけが先行しているのか、大型倒産が多発し失業率も過去最高を記録して居ります。しかし、師走に飛び込んできた敬宮愛子内親王誕生の朗報はこれまでのことを払拭する一条の光明と期待するところです。
 
 そして迎えた本年は、一連のテロ事件も解決に向かいアメリカが自信を取り戻し世界経済が好転しはじめる事を期待したいところです。
 
 さて、吾が広島工業大学同窓会は、1963年第1回短大卒業生103名から今日まで29545名の卒業生を数えます。
 
 その中で最年長卒業生はそろそろ社会の中で定年を迎える年齢となります。

 少子化の進む現状の中で大学も大きく変わろうとして居ります。

 いや、変わらなければなりません。

 私は、就任以来同窓会の改革を掲げ、役員の皆さんと協議を重ね色々と検討して居りますが、現在があるのは過去のおかげであることを実感しています。未来永劫同窓会を存続させる為の皆様方の知恵を結集したいと思っています。

 特に役員構成は年代層をいくつかに分けてバランス良く配分する事により全ての年代層の意見が学部学科を越えて役員会に繁栄することが理想と考えて居ります。我と想わん方の立候補を希望しています。又環境学部の卒業生、是非役員に参加して下さい。

 兎にも角にも我々は「教育は愛なり」の建学の精神と「常に神と共に歩み社会に奉仕する」という教育方針で学んだ仲間です。

 広島工業大学の卒業生であることに誇りを持って大いに社会へ奉仕しようではありませんか。

 同窓生の団結が強ければ強い程、同窓会又広島工業大学の発展に寄与するものと確信しています。同窓生の皆様方のご活躍を心よりお祈り申し上げます。



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櫻井春輔氏 グローバル化時代における技術者教育プログラム
※広島工業大学同窓会報第36号より

学長 櫻井 春輔

 同窓会の皆様方におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 さて、21世紀はまさにグローバル化時代です。日本人技術者は国際的な場で仕事をする機会がますます増えるでしょう。また、国内においても外国企業との共同作業が増すでしょう。そこでは見知らぬ他者とパートナーを組む場合も生じます。その際、パートナーとして信頼できるかどうかについては常に気をくばらなければなりません。
 
 そこで頼りになるのが倫理観と能力です。そしてそれを保証するのが資格です。当然、その資格は国際的にも通用するものでなければなりませんし、また、それは国際的に共通のものでなければなりません。

 アメリカでは20世紀の初期から、技術者を共通の基準で育て登録する制度が始まりました。そこで登録された技術者は、プロフェッショナル・エンジニア(PE)と呼ばれ非常に権威があります。これは技術者個人としての能力が一定の基準を満たしていることを認定するものです。
 
 一方、個人ではなく、大学等の技術者教育プログラムを評価・認定し、その教育プログラムが一定の基準を満たしている場合には、そのプログラムを終了した学生はPEとして実務を行うに必要な能力を備えているとして、PEの一次試験を免除するものです。アメリカではそのための認定組織として米国工学技術認定機構(ABET)が1932年に設立されました。
 
 一方、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージランド、アイルランドなどもそれぞれ技術者教育プログラムについて個別に基準を設け評価認定を始めました。そして、その認定の制度は1970年頃から英語圏を中心に共通化され、1989年に上記の各国に米国を加えた6カ国が、プラーグにおいてそれぞれの認定基準と手順が実質的に同等であることを確認し、協定に調印しました。これが技術者教育の同等性を国際的に承認する制度としてワシントン・アコード(WA)と呼ばれるものです。
 
 ワシントン・アコードのメンバーは、当初に調印した認定団体、すなわちオーストラリア技術者協会(IEAust)、カナダ専門技術者評議会(CCPE)、アイルランド技術者協会(IEI)、ニュージランド専門技術者協会(IPENZ)、英国工学評議会(EC)、米国工学技術認定機構(ABET)の6カ国に加えて、1995年に香港技術者協会(HKIE)、そして1999年に南アフリカ工学評議会(ECSA)の加入が承認され、現在は8調印団体となっています。
 
 さらに、ヨーロッパでは1993年に汎ヨーロッパ技術者協会連合(FEANI)のEuro技術者、1990年代後半には、アジア太平洋経済会議においてAPEC技術者制度が確立されました。しかし、APEC技術者に関しては認定制度がなくても良いことになっています。

 経済活動が国境を越えてグローバル化するとき我が国が世界に通用する認定資格を持つことは非常に重要な意味をもつことになります。しかし、現在、日本には国際的に認知された資格はありません。したがって、日本の技術者が世界で通用しないという事態が生じます。これは深刻です。
 
 分野によっても違いますが、例えば土木の分野において国外の土木工事を受注しようとする場合には企業はまずそのプロジェクトに携わる技術者の名簿を提出することになります。その名簿の欄にアメリカの企業であれば、プロフェッショナル・エンジニアー(PE)、イギリスであればチャータード・エンジニアー(CE)という資格が明記されます。しかし、日本の場合は○○建設会社設計部長等ということになります。その場合、日本の設計部長の能力を国際的に保証するものがありません。また、ゼネコンなどの国際競争入札では、専門技術資格保持者のサインが要求されます。
 
 そこで日本の企業は社員を米国の大学に留学させ、PEの資格を取らせるか、あるいは資格を持つアメリカ人技術者を雇ったりすることで対応してきました。
 
 しかし、それは本質的な解決にはなりません。このことからも明らかなように日本も世界に通用する認定制度をつくる必要にせまられているわけです。もちろん日本にも「技術士」という国家資格があります。しかし、この資格は国際的に認められていません。
 
 そこで、日本の技術士を国際的な標準に合致する制度に改めるために、その資格基準の見直しが行われています。しかし、その基本となる技術者教育を変えなければ抜本的な改革にはなりません。

 このような状況の中で、1999年11月に社団法人日本工学教育協会が中心となって、技術者の教育プログラムの認定を目的とした日本技術者教育認定機構(JABEE)が設立されました。そして、2000年3月、米国バルチモアで開催されたABET理事会において、ABETとJABEEはそれぞれの国を代表する技術者教育プログラムの認定組織であることを相互に認め、認定業務の進展のため相互に協力することを定めた相互理解覚書に調印しました。
 
 一方、技術士については、2000年4月に国会で「技術士法の一部を改正する法律」が承認されました。それによりますと、認定を受けた教育課程の修了者、即ち、JABEE認定の教育プログラムの終了者は一次試験が免除され、修習技術者として4年の実務経験を経て二次試験に合格すれば技術士の資格が取得できます。しかし、一方で適切な継続専門開発を受ける義務を負うことが明確にされました。
 
 JABEEについてはすでにご承知と思いますが、技術系学協会と密接に連携しながら、大学など高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムが、社会の要求水準を満たしているかどうかを審査し認定する非政府団体です。
 
 すなわちJABEEが担おうとしていることは大学等の高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムを認定することです。そしてその評価結果は国際的に公表することになります。
 
 対象とする専門分野は化学、機繊、材料、資源、情報、電気・電子・通信、土木、農業工学、工学(融合複合、新領域)、建築、物理・応用物理、経営工学、農学一般、森林など14の分野であり、随時再編されたり増加したりすると考えられます。
 
 この教育プログラムの審査基準は共通基準と分野別基準に分かれています。特に共通基準で注目されるのは「多面的に物事を考える能力」「問題解決能力」「自主的に継続して学習する能力」「コミュニケーション能力」「語学力」など、そして重要なのは「技術者倫理」です。
 
 JABEEがワシントン・アコード(WA)へ加盟するためには、最低2つの既存調印団体の推薦が必要です。さらに、その結合で調印団体の3分の2の賛成投票が必要という厳しい条件があります。

 JABEEのWAへの加盟は永年の夢でしたが、その努力が稔り、昨年(2001年)6月21、22日の両日南アフリカで開催された第5回WA総会でJABEEの資格申請案が上程され、審議の結果暫定資格調印団体として認められました。ここにJABEEは英語圏以外の認定団体として初めて暫定資格として加入が許可されたわけです。

 なお、同じ総合に提出されたマレーシアの申請案は否決されました。今後、JABEEは2003年7月に開催予定の第6回結合までにWAの本審査を受けなければなりません。

 いま、我が国の工学系大学においてはJABEEの認定を受けるべく検討が積極的に進められています。いくつかの大学はすでに試行を受けています。本審査の申請募集も始まっています。もう待ったなしです。
 
 本学においてもJABEE検討特別委員会を設けて、その申請に向けての検討を開始しまし
た。JABEEの認定を得ることは容易ではありませんが、わが国の技術者教育の向上、国際的に通用する技術者の育成のために避けて通れません。

 前途は厳しいものがあるでしょうが、教職員が一丸となって、21世紀のあるべき日本の技術者教育を頭に描き邁進しなければならないと思っています。

同窓会諸氏のご理解とご支援を切にお願いいたします。



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平成14年度(2002年度)活動方針
(1) 会誌、会報の発行

(2) 同窓会名簿の発行ならびにメンテナンス

(3) ホームページの活用

(4) 支部活動
  • 支部との連携
  • 支部結成の推進
(5) 在学生援助

(6) 同窓会業務の大学との連携

(7) 4プロジェクト(会則,事業,財務,支部)による検討

(8) その他同窓会の発展に必要と思われる事業

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